「ミステリという勿れ」雨の撮影

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「ミステリと言う勿れ」(1/31)放送分内の雨降る東屋でのシーンは、利根運河で一昨年クリスマスシーズンに撮影されました。

 

当時、このお話をいただいた際に、あまりの先の月9で大変驚きました。通常連ドラは2〜3ヶ月前からの準備撮影に入っていくことが多いです。つまり、撮影して数ヶ月後に放送されるのがテレビドラマです。ところが、数ヶ月後どころか、丸々1年先のまた、先という事でした。

とにかく、主役の菅田さんの予定がびっしりというのが主な理由でした。更に、5日間の撮影という事でした。雨天予備日を入れますと1週間以上にわたるの長期ロケ予定でした。ずーっと雨のシーンで雨天予備というのも不自然に思われるかもしれませんが、雨のシーンだからといって本物の雨で撮影がありがたいかと言えば、全く逆で、本物の雨では撮影はかえって困難なのです。ドラマの設定の雨は、そのシーンの中に必要とされている降りかたがあります。極端ですが、例えばシトシト降っている会話シーンで、横殴りの雨では、会話シーンは成立しません。

今回のシーンはとにかく、ずっと降っているので、それを河川付近で撮影するのはかなり困難ですが、そもそも、川そばに都合よく東屋があるところはありません。まして1週間あまり撮影を続けられるところは、そうそうありません。そうそうどころか無いわけです。そこで制作と協議して浮かび上がったのが、利根運河です。
 

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今から130数年前に、利根運河の設計に関わった、オランダ技師、アントニー・トーマス・ルベルタス・ローウェンホルスト・ムルデルさんも、まさか運河でテレビドラマが撮られるとは思わなかったでしょう。しかしながら「ミステリと言う勿れ」スタッフとともにFCは、この歴史ある利根運河に、一時的にですが東屋を仮設させていただきました。

ドラマを見た方は、東屋が最初からあると思われたかもしれませんが、実はないわけです。撮影中は通りがかりの方に、何度も何度も、東屋ができるんですかとか、いつから使えるんですかといった声をかけられました。本当は、主演菅田将暉さんで再来年の月9のドラマで登場する東屋ですと言いたいところでしたが、当時は、超極秘でしたので一切言えませんでした。当時近隣の方々に説明したところでもあまりに先のお話でリアリティが無かったです。ドラマ自体の映像化を公表できない状況下でもありましたし、ミステリと言うジャンルのドラマだけに、様々な内容を秘する必要性が特に強くありました。

屋外での撮影で、しかも、雨を降らして5日間も撮影していながら、極秘で撮影を進めることは困難でした。当然ながら、東屋は仮設ですので、すぐどかす事ができないといけませんでした。警備の必要もありました。撮影は5日連続で撮れれば楽なんですが、途中撮影が空くので、仕方なく一度、崩して無くして、また、撮影時に建て替えるということもしていました。
 

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そして何よりも大変なのは、雨です。運河だからと言って、そこの水を吸い上げるわけにはいきません。通常の雨シーンは全て、飲料に使えるような水道水です。それは、いろんな意味で安全性であり、環境配慮が一番です。

今回も場所は決まったものの、水源問題には時間がかかりました。最終的には、給水車を持参と、それを補完する水源を近接の明治25年創業の『割烹新川』さんの敷地内の水栓をお借りしました。明治25年創業ということは、利根運河ができて2年後からオープンしている歴史あるお店です。近年は、割烹にとどまらず、ブラッスリーしんかわとしてフレンチの人気店としても知られるお店です。撮影中は、お店から東屋も見えたと思います。約4トン程度の水を給水車に積んで現場に来て、そこから、長くホースを伸ばして脚立に乗って雨を降らすわけです。雨降しをしていますと、自然の雨が、いかに水量があるかを実感します。

部分的に降らしているだけですが、4トン程度で終日撮影していれば、無くなってしまう恐れがあるわけです。無くなるそばから、新川さんの水栓からホースで水を足したりします。過去に水道局でのストロベリーナイトでの豪雨は一晩で5トン程度使いましたし、数年前の映画「AI崩壊」の未来のサーバールームがプール状に浸かっている部分には、数十トンの水量を水道局よりタンク車で何往復もして使いました。自然の雨のめぐみを人口的に作る難しさを降雨シーンではいつも感じます。そのような撮影する方々を、特機部といいまして、人口雨を専門に作り上げていきます。降雨シーンが一番いいのは、風がない曇り空です。日差しが強い陽の中で風が強い天候で降雨が一番厳しい撮影です。
 

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5日間の撮影で全ての天気が風がなくて曇天とはいきませんでしたが、特機部含め撮影隊全体で、懸命に利根運河で撮影が行われました。整(ととのう)と記憶喪失の男の会話のやりとりは、現場でも、緊張感のあるものでした。

静かな二人だけの芝居の周りには、それを、まるで、すっぽり隠されるように大勢のスタッフと雨でドームのように見えました。寒さ極まる降雨でしたが、そのドームは冬のかまくらのような暖かさがあったように記憶します。
 

撮影に使われた東屋こそ今はありませんが、『運河交流館』に立ち寄って情報を得て、運河をのんびり散策するれば、多分いろんなことが整。

運河交流館HP
https://www.tone-unga.com
 

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流山市フィルムコミッション